事例

「2025年の崖」を見据え、TISとの協業によるモダナイゼーションサービスを展開

TIS株式会社

  • 業種

    情報・通信業

  • 課題

    ・レガシーシステムが徐々に複雑化・ブラックボックス化し、保守工数や運用コストが増大
    ・ハードウェアの老朽化とサポート切れにより、システム運用が困難に

  • 導入メリット
    • 初期アセスメントの段階で要件通りのレスポンスと使いやすいUIを実装可能
    • フェーズド方式によるリライト手法を採用することで、短期間・低コストで技術的負債を解消
    • アセスメントから運用保守まですべての工程を一気通貫で実施可能
  • 対象デバイス
    デスクトップ

経済産業省のDXレポートで「2025年の崖」が指摘されるように、企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは待ったなしの状況です。DX推進には、レガシーシステムからの脱却が欠かせませんが、なかなか進んでいないのが実情でしょう。老朽化したシステムのモダナイゼーションを、円滑かつ短期間で実現するポイントはどこにあるのでしょうか。
TIS株式会社の藤原尚氏と株式会社オープンストリームの池田峻二が、レガシーシステムを刷新し、DXを推進するための方策について、語り合いました。


DX推進に効果的な「リフト&シフト」のアプローチ

―企業において、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは、現在どの程度進んでいるのでしょうか。

藤原:DXは「既存業務の効率化」と「新たな事業創出」の2つに分けられますが、前者が約8割を占めています。経済産業省の「DX推進ガイドラインVer.1.0」でも、「データとデジタル技術の活用によるビジネスモデル変革と競争優位確立」と定義されていますが、なかなかそこまでは進んでいません。

池田:「Biz/Browser」の顧客企業には、PC向けとハンディターミナル向けがあります。PC向けでは、レガシーシステムを最新のものに置き換えるケースが増え、ハンディターミナル向けでは、大手企業が倉庫の自動化でDXの効果を実感している状況です。ただ物流業は、中堅中小企業が多く、完全自動化は難しいので、人手による作業と自動化を共存させるハイブリッド方式が中心でしょうか。

―各企業がDXを推進する上で、どのようなことが課題になっていますか。

藤原:多くの企業で、価値創造を図っていくためのビジョンが、なかなか作れないのが実情です。そこでTISでは、「リフト&シフト」という考え方を提唱し、まずはレガシーシステムを新しいテクノロジーが使えるような環境に移行します。その上で新しい技術を取り込んで、一つひとつ工夫していくという段階的なアプローチを提案しています。

池田:巷では、完全自動化やAI活用など、非常に先進的なDX事例が取り上げられがちです。ただ日本の企業は、そこまで一足飛びの成果を狙うケースは少なく、実際の要望とのギャップが大きいのが現状でしょう。現場のニーズにマッチした取り組みや事例が求められています。

藤原:レガシーシステムのモダイナイゼーションでは、大規模な基幹システムをオープン化しますが、その投資が直ちに利益に結びつくわけではありません。そのため、現場が移行の必要性を訴えても、経営層に届かず、先送りされるケースが少なくないのです。しかし、大手ベンダーのメインフレーム事業からの撤退の発表以降、足元では問い合わせが増えています。製造や販売の終了はまだ先ですが、そろそろ検討を開始しないと間に合わないでしょう。


“システムの理想像”を構想した上で、レガシーからの脱却を図る

―DXやモダナイゼーションの実践には、何が大切だと考えていますか。

藤原:まず必要なのは、利用企業自身が移行後のイメージを持つことです。そのためにも、経営層、情報システム部門、運用部門、ユーザー部門の合意形成を推奨しています。費用や期間などの情報が独り歩きして敬遠されたりすることの無い様、移行手段を検討する前に、目的や解決すべき課題などを合意しておくことが重要です。

例えば、弊社がモダナイゼーションを支援したあるお客様では、まず制度改定などに柔軟に対応するために、レガシーシステムは使い続けないという方針を決めました。その後、移行方式の検討に入り、アプリケーションのマイグレーションを行うことにしたのです。

池田:「Biz/Browser」はフロント部分のツールなので、モダナイゼーション全体に関わるケースは多くありませんでした。ただ現在、大手自動車会社様のマイグレーションプロジェクトに参画していて、その中で学んだことがあります。

同社の情報システム部門はホストの廃止を考えていましたが、それだけを目的にしても、上手くいきません。そこで、最初にITインフラのグランドデザインを描き、すべてのデータを吸い上げる統合プラットフォームの構築を打ち出しました。これはメインフレームでは不可能なので、Web化が必要だとして、結果マイグレーションが迅速に進んでいます。

―モダナイゼーションの取り組みで、他にどのような事例がありますか。

池田:弊社の場合、SIer(システムインテグレーター)が、UI(ユーザーインターフェース)も含めてすべて改修すると引き受けて、HTMLやJAVAで画面をつくり直したものの、現場が納得せずに持ち込まれる案件が圧倒的に多いでしょうか。

ホストのUIはユーザー視点に立って作り込まれているので、使い勝手もいいし、レスポンスも速いのです。ところがWebシステムはトランザクションがあるので、どうしても遅くなってしまいます。
先に挙げた事例でも、レスポンスはホストと同等か、より速くなることが必須要件とされました。「Biz/Browser」を使えば、ホストと同等のレスポンスを実現できますし、使い勝手も良いので満足いただいています。


独自開発の高性能変換ツールで、安全に短期間での移行を実現

―TISが手掛ける事例には、どのようなものがあるのでしょうか。

藤原:TISにご相談頂く案件にも同様に、レガシーシステムの再構築を進めていたが、ホストの更改までに間に合わないことが判明したというケースがあります。

モダナイゼーションには、一気にゴールを目指すビッグバンアプローチと、段階的に進めるフェーズドアプローチがあります。ビッグバン方式による再構築は理想的ですが、難易度が非常に高く、長期間にわたり、費用もかかります。そこで、TISではフェーズド方式によるリライト手法で、短期間、低コストで技術的負債を解消(リフト)した後、業務改善やDXを推進(シフト)することを提案しています。

具体的には弊社の「Xenlon~神龍 モダナイゼーションサービス」(https://www.tis.jp/service_solution/xenlon/)で、COBOLなどのレガシー言語からJAVAへのリライトを実現し、オープン環境へ移行します。TIS独自開発の高性能変換ツール「Xenlon~神龍 Migrator」により、業務ロジックの100%を自動変換し、性能・正確性・保守性を担保しながら短い期間で安全・確実に移行できるのが特徴です。

2014年開始のプロジェクトから使い始め、現在までに独立行政法人住宅金融支援機構、「ワークマン」「カインズ」をグループ会社に持つ株式会社ベイシア、JFEスチール株式会社など含め複数社の実績があります。


TISとの協業で、プロジェクト初期に「Biz/Browser」でUIを開発

―オープンストリームの「Biz/Browser」は、どのようなソリューションですか。

池田:「Biz/Browser」は、業務システム用のアプリケーション開発・実行環境で、操作性とレスポンスに優れ、OSの違いを吸収します。ヤマト運輸株式会社や第一生命保険株式会社の事例にもあるように、端末のOSが変わっても、アプリケーションを変更する必要がありません。

WindowsXPからWindows10、11まで業務アプリケーションを、全く同じ形で動作させることができます。自社開発製品ですから、顧客の声を直接聞いて画面を開発します。具体的な要望を反映させた、画面を作り込めるわけです。

オープンストリームは、顧客企業がモダナイゼーションを図る上で、SIerとの連携が重要だと考えていて、TISとの協業を進めていく計画です。具体的には、プロジェクトの早い段階で、レガシーシステムの画面やレイアウトを継承したUIの作成を勧めています。

画面構成だけであれば、作り込まれたホストの画面に対応したものを、半日程度で提案可能です。これによって、今まで移行後だった画面作成を、「Biz/Browser」でプロトタイプを作成し、移行前の段階で提案しています。

―2つのソリューションにおいて、お互いのメリットはどこにありますか。

藤原:今までモダナイゼーションを行う際に、UIについては現行を踏襲するのか、新しく作るのかを顧客に尋ねていました。しかし、何もないところでイメージを作り出すのは非常に困難です。

池田:たたき台もない状態で、ユーザー企業がイメージするのは難しく、なかなか具体的な意見を伺えませんでした。しかし、「Biz/Browser」で画面を作成してイメージを共有することで、ボタンの大きさや位置など、お客様から様々な意見を引き出すことができ、プロジェクトを円滑に進めることができます。「Biz/Browser」であれば、容易に画面イメージを変更できるため、お客様の意見を迅速に反映することが可能です。

TISとオープンストリームの協業によるモダナイゼーションのイメージ

―今後、企業はモダナイゼーションに、どう取り組んでいけばよいのでしょうか。

藤原:情報を収集したものの、悩んで先送りしている企業が少なくないと思います。まずは資産の分析・整理や技術的な検証を行うなど、モダナイゼーションに向けた準備を、少しでも進めることが重要だと思います。 弊社アセスメントサービスを通じてご支援していきたいと考えます。

池田:中堅中小企業のDXやモダナイゼーションの取り組みは、まだまだこれからなので、TISと協力しながらソリューションを準備しています。「2025年の崖」まで、それほど猶予がありませんから、価値あるモダナイゼーションを引き続き提案していきます。

ユーザープロフィール
TIS株式会社

金融、産業、公共、流通サービス分野など多様な業種3,000社以上のビジネスパートナーとして、お客様のあらゆる経営課題に向き合い、「成長戦略を支えるためのIT」を提供。50年以上にわたり培ってきた業界知識やIT構築力で、日本・ASEAN地域の社会・お客様と共創するITサービスを提供し、豊かな社会の実現を目指す。

TIS株式会社産業公共事業本部 産業ビジネス第3事業部 産業ビジネス第3企画営業部 エキスパート

藤原 尚氏

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